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即興ソロ(概論編)

<前書き>

自分の感情を、即興で自由に思うがままにピアノに反映させる。時には、他の楽器と会話をするように高め合う。

ジャズピアノに挑戦されたことのある方の多くは、そのような目標、または夢を持ったことがあるのではないでしょうか。

そしてまた、その壁のあまりの高さに、打ちひしがれそうになったことがあるのではないでしょうか。

管理人のジャズピアノ歴も3年程度になってきたところで、カメのようにのっそりと、ではありますが、即興演奏の練習方法や考え方について、「気付き」があった部分もありますので、それらをココに記してゆきたいと思います。

この即興ソロの部門では、主に右手の即興ソロの練習に当たっての、基本的な考え方や練習方法に絞って記載します。

しかし、何度も言いますが、あくまでジャズピアノ歴の浅はかな管理人が試行錯誤しながら考えた事柄ですので、間違った解釈や考え方、遠回りな練習メニューもあるのかもしれません。

もしここに述べたことに何か間違いや課題があるのであれば、それらをblush upしてゆく意味でも、あえて勇気を出して管理人の考える即興演奏の考え方、練習方法を述べたいと思います。

 

<即興演奏の形式>

と、その前に。

まずは、ジャズスタンダード曲を演奏する上で、即興演奏のオーソドックスな形式、ルールについて知っておく必要があります。

 

コードシート(コードとメロディだけの楽譜)でジャズのスタンダード曲を演奏する場合、即興演奏の仕方、形式があります。

● ピアノソロで演奏する場合

 1.前奏を演奏する。(なくてもいい場合もあります。)

 2.主題を一通り演奏する

 3.主題のコード進行で即興ソロを演奏する。(ここは何周繰り返しても構いません。)

 4.主題(アタマ)に戻って、主題を最後まで演奏して終わり。

 

● 複数の他楽器とセッションする場合

 1.前奏(だいたいピアノが4または8小節)を演奏する。

 2.全員で主題を一通り演奏する。(メロディは管楽器またはピアノ)

 3.各楽器毎に一回りづつ(例えば管楽器、ピアノ、ギター、ベースといった順に)主題のコード進行に沿って、即興ソロを演奏する。

 (他楽器がソロの時、ピアノはバッキング=伴奏に徹します。)  

 4.主題のコード進行に沿って、メロディ楽器(管楽器、ピアノ、ギターなど)が4または8小節のソロを即興演奏する。 

 5.続きの4または8小節をドラムだけのソロにする。

 6.主題のコード進行が一回りするまで、4と5のステップを何度も繰り返す。これを4バース、または8バースと呼びます。

 7.主題(アタマ)に戻って、管楽器またはピアノが主題を最後まで演奏して終わり。

 

ピアノソロであれば、自分1人なのでこの形式に限らず、自由にリズムや速度、調などを変えても大丈夫ですが、セッションの場合は、大方このルールに従って演奏されていることが多いと思います。

で、自分らしさやその時の感情の「見せ場」である即興ソロを格好良く演奏したい!んですが、プロの方の演奏なんかを見てても、もう魔法にしか見えないですよね。

何がどうなってそうなってるのかがさっぱりわからず、ただただ、すごい!!っていうのだけわかる。笑。

なので、「じゃあ自分で即興ソロをやってみよう。」ってチャレンジしても、何からどう手をつけたら、即興ソロが弾けるようになるか、イメージがわかないんです。

 

<なぜ、即興ソロの敷居が高いのか>

この答えは単純です。

プロのピアニストのように即興ソロを演奏できるようになるまで、体で覚えないといけない(ただ頭で理解すればよいのではなく)理論、技術が多すぎるのです。

そして、教則本には、書いてある知識や技術が、なぜ、そしてどのように、実践的に役立つのか、についての記載がほとんどないんです。

例として、管理人が繰り返してきた14のステップを挙げます。

 

 1.インターネットの口コミを見て、ジャズの理論書やフレーズ集を買う。

 2.Improvizationの項目部分を少し読む。

 3.とりあえず、雰囲気で読んだ部分の話半分くらいは理解できたような気になる。

 4.書いてある練習方法をとりあえず真面目にやってみる。

 5.練習したところについては、ある程度できるようになる。

 6.はて、ではこの練習成果をどうやって、実践の即興に生かせばいいかな、と思う。

 7.わからない。。

 8.試しに即興演奏してみるけど、地道に練習した展開なんて出てこないし、そもそも出てきてても気付かない。

 9.なんかちょっとイヤになる。

 10.でも、練習成果を実践に生かす方法が、先に書いてるかもしれないから、もうちょっと読み進めてみる。

 11.十二音階、転調して全部の調で弾けるようになるまで繰り返し練習する。とか書いてある。

 12.こりゃ大変だと思って、ちょっと一休みに一杯ひっかける。

 13.眠くなってくる。

 14.zzz。

 

ま、最後の方のステップは管理人だけかもしれませんが、多くの方が太字の部分に敷居を感じるのではないでしょうか。

格好いいフレーズの数 and/or 基礎練習 and/or スケールの数 × 12音階 = 天文学。

このように、ジャズの即興演奏をマスターするために練習しなさい、と書いてある事柄が多すぎて。

そして、それをどうやって実践に生かせばいいのかわからなくって。

その結果、手に負えなくなってしまうパターンは多いんではないか、と思います。

 

では、1~14のステップを何周も繰り返して、管理人が気付いたこと。です。

 

「多くの教則本には、練習すべきこと、理解すべきことの優先順位が書かれていない。」

 

世界を相手に通用するプロでも目指すのなら、教則本に書いてある通り、全てのスケール、フレーズを全てのキーで弾けるに越したことはないかもしれません。でも、生身の人間が練習してゆく上で、成果の見えにくい練習を長続きさせることは、とても難しいことです。

なので、教則本の全部を鵜呑みにはせず、

「実践のソロに応用することをイメージした上で、その知識や練習方法は、役に立つ幅がどれくらいあるのか?」

優先順位を考えて、つまみ食いしながら練習を進めてゆくことが重要なのではないか、と思うようになりした。を一通り考えた上で、

 

そこで、ここには現地点で管理人が考える、主に優先順位に重点を置いて述べたいと思います。

(細かい理論や練習手段などは各教則本を参考にされてください。

ここにはおそらく多くの教則本に書かれていないであろう優先事項を中心に述べます。)

 

<キーの優先事項>

フレーズやスケールの練習をするとき、12音階全てのキーでの練習を薦められることが多いです。

しかし、実際にフレーズやスケールを全てのキーで練習してると、体に入ってくるまでに相当の時間がかかります。

 

まずはこれだけ。というキーに絞って練習するようにしています。なので管理人は、スケールやフレーズ、即興ソロの練習をするときには、

具体的には、、

C(ハ長調)

F(へ長調)

B♭(変ロ長調)

E♭(変イ長調)

G(ト長調)

 

と、この程度です。唄の伴奏とかになると、ボーカルの方のキーに合わせるのでどんなキーでもできるようになるに越したことはないのですが、管楽器とのセッションが多いためか、ジャズスタンダードの多くは♭系の曲が原キーとなっていることが多いようです。

なので、即興ソロ(右手のメロディ)に限っては、まずは上の5つの調(キー)を優先して練習をするようにしましょう。

 

<右手と左手の優先順位(セッションの場合のみ)>

多分「即興あるある」なんですが、右手を一生懸命弾くと、左手の和音を見失う。

左手の和音を弾くと、右手のメロディが変な音を押えてしまうし、スラーや抑揚も意識できない。w。

どっちもなんて無理!!ですよね。。

 

これも優先事項があります。セッションのソロでの話ですが、

ソロでは右手のメロディと左手の和音が、会話をするように。というのが、基本的なスタンスと考える方がいいと思います。

つまり、

1.右手のメロディを弾いてるときは、右手だけに集中(優先)して、抑揚やスラーをしっかり意識する。左手の和音はほとんど弾かない!

2.メロディが途切れて休むところで、左手で伴奏(和音)を合わせる。(右手で弾いたメロディに左手の和音で相槌する感じ)

 

この1と2のステップを繰り返してソロを組み立てるのがよいと思うのですが、もっと極論を言えば。

セッションでのピアノソロに、伴奏はなくてもいい!!

要は、セッションのピアノソロで優先すべき事項として、メロディのオリジナリティが9割以上だと管理人は考えています。

そこに集中して、自分なりの味を出すことを最優先する。

左手の和音に意識が削がれて、右手のメロディの美しさが減るくらいなら、左手はもう使わない!

欲張ると、二兎を逃してしまいます。なので、それくらい割り切って右手にこだわる方がいいと思います。

キース・ジャレットなんか、ほとんど左手の和音弾かない時もあると思いますが、右手のメロディラインとリズム、抑揚だけでとっても美しいです。

 

<即興のメロディを作るときって、その時その時のコードに沿ったキーのスケールをイチイチ考えるべきなのか!?>

即興を練習し始めたとき、この疑問が最大の疑問でした。

例えば、FのBulesならB♭7のところであってもCのところであっても、Fのブルーノートスケールと、Fのメジャースケールの音だけで即興メロディが作れる。つまり、1つのキーのスケールだけで、最初から最後までほぼ即興できる。

でも、Blues以外だと、1つのキーのスケールだけでソロを作ってみると、和音とぶつかる音が出てくるんですよね。

じゃあ、コード進行に沿って、AmのときはAのマイナースケールの音でメロディを。FのときはFのメジャースケールでメロディを。

って各コード毎にスケールのキーを使い分ける必要があるのか?

だとしたら、大変すぎる!(特に展開の速い曲!!)

 

この疑問に答える内容も、管理人は教則本で見つけることはできませんでした。

でも、最近になってようやくなんですが、この疑問に自分なりの回答がわかってきたんですよね。

あくまで原則としての答えですが。

 

● その曲の調のダイアトニックにあるコードなら、その曲の調のメジャースケールでメロディを作ることができる。

● ダイアトニック以外のコードは、しょうがいないからそのコードに対応したスケールでメロディを作る。

● ドミナントモーション(Ⅴ7-Ⅰ)の時のⅤ7のコードを見つけたら、そこが工夫のしどころ!!

 

こうやって考えると、ドミナント7の時以外は、結構シンプルにメロディを作れるんです。

そして、ドミナント7のコードの時こそ、オルタードやコンディミやホールトーンスケールなんかを使って、ジャズらしい魔法の響きを唸らせる!!

 

ん?何言ってるのかわかんない?

そうですよね。専門用語が多すぎてわかんないですよね。管理人も1年前にこんなこと言われても何?って感じでした。

ダイアトニックとドミナントモーションだと。いろんな専門用語や知識が多いなか、ジャズのソロを考えるにあたって、優先順位の高い知識、技術は、

管理人は、今のところそのように思っています。

なので、この2つのキーワードについて、説明してゆきますね。

 

<ダイアトニックって何のためにある?>

多くの教則本の導入部には、「ダイアトニック」という言葉が出てきます。

管理人も一通り目を通して「ダイアトニック」という言葉の意味は理解しました。

しかし、「なぜ即興演奏にダイアトニックが重要で、それを実際の即興にどのように生かせばいいのか。

は、当初、全然わかりませんでした。

 

どうでしょう。それを教えてくれる教則本はあったでしょうか?

(実際はあるんですが、とても重要なことであるにも関わらず、ほんのちょっとだけ隅の方に書かれていたり、英文の直和訳で意味がわかりにくかったりして、理解が難しいんです。)

 

管理人なりにわかったことを述べたいと思います。わかりにくい直訳の和文を何度も読み返したり、自分の理解が本当に正しいのかいろんな先輩や先生に質問して、

結論から言えば、

 

● ダイアトニックのメジャースケールは絶対に覚える。(特に優先度の高い5つのキー)

(Cのメジャースケールはドレミファソラシド。みたいな。)

● ダイアトニックコードも覚える。

(これも特に優先度の高い5つのキーでのダイアトニックコード全て。

できればⅠ△7はC△7、Ⅱm7はDm7とか、音程和音とリンクして覚える。

● ドリアンかフジリアンか知らんが、星の数ほどあるダイアトニック(モード)スケールを覚える優先順位は低い。

(まずは、キーのメジャースケールだけで十分)

 

失礼しました。結論から、述べました。

でもなぜ、そのように考えるのか。それを理解できれば、ダイアトニックがなぜ重要なのかが、わかったことになると思います。

 

例として、All of meを挙げてみたいと思います。

この曲はC(ハ長調)の曲としてコードシートに書かれていることが多いと思います。

ハ長調のダイアトニックコードと言えば、、(ココは理論書を参照ください。)

 

C△7、Dm7、Em7、F△7、G7、Am7、Bm7♭5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

です。全ての和音は、Cのメジャースケールである白鍵の音のみで構成されています。

All of meのコード進行を眺めて、上記のダイアトニックコードなのか、それ以外なのかに分けていきましょう。

(ここでは特にメジャーとマイナーの違いに注目します。例えば、CとC△7やDmとDm7は同じとみなしてください。)

すると、

ダイアトニックコード: C、Dm、Am、Dm、G7、F

ダイアトニックコード以外: E7、A7、D7、Fm

とこんな感じで、浮かび上がってきます。

 

● その曲の調のダイアトニックにあるコードなら、その曲の調のメジャースケールでメロディを作ることができる。

● ダイアトニック以外のコードは、しょうがいないからそのコードに対応したスケールでメロディを作る。

 

では、このコンセプトを応用してみます。

すると、ダイアトニックコードであるCやDm、Am、Dm、G7、Fなんかは、Cのメジャースケール。すなわち、ドレミファソラシトの白鍵の音だけで、違和感なくメロディを作れます。

一方で、ダイアトニックコード以外のコードである、E7、A7、D7、Fmの4つ。このコードの部分は、白鍵音の中にぶつかる音が出てきます。

例えば、ソは白鍵の音(Cのメジャースケール内の音)ですが、E7のコード中のメロディラインにソを選ぶと、伴奏はメジャーなのに、メロディがEmの構成音であるソが出てきて違和感が生まれます。つまり、E7のコードの時は、ソではなく、E7の構成音であるソ♯を選ぶのが正解なのです。

(これはあくまで原則的なこととしてであって、実は応用編を理解すれば、E7の時にソを選ぶことはできる。という結論に変わります。)

 

どうでしょうか。ダイアトニックを勉強したことがある方なら、この辺で何か気付いたことがあるかもしれません。

 

ダイアトニックのコードは全て、そのキーのメジャースケールの音だけで作られている和音です。

Em7はミソシレ。F△7はファラドミ。と白鍵の音だけですよね。

つまり、ダイアトニックコードは全て、その元になっているキーのメジャースケールの音で構成されている。

逆の言い方をすれば、ダイアトニックコードの時にそのキーのメジャースケールでアドリブすれば、自然とドリアンとかフジリアンとかダイアトニックのスケールを使っていることと同義になるんです。

だから、

● その曲の調のダイアトニックにあるコードなら、その曲の調のメジャースケールでメロディを作ることができる。

 

ではダイアトニックコード以外の和音はなぜ、メジャースケールでマッチしないのか。

それは、ダイアトニックコード以外の和音の構成音に、メジャースケール以外の音が入っているから。

なんです。

 

例えば、Cの曲なら白鍵だけの音を意識して、ソロを作ってみるなら、だいぶやりやすくなるはずです。

ダイアトニックコードならそれが可能ですが、ダイアトニック以外ならぶつかる音が出てくるので、しょうがないから、E7ならEのメジャースケールやミクソリディアンスケールでメロディを考えるんです。

● ダイアトニック以外のコードは、しょうがいないからそのコードに対応したスケールでメロディを作る。

というのはそういう訳なんですね。

 

ここまで理解できれば、ダイアトニックがなぜ重要なのか。がわかると思います。

全てのコードに沿って、それぞれに対応するスケールをイメージしながら即興するのは大変です。

しかし、ダイアトニック以外のコードだけを注意するようにして、ダイアトニック内のコードは主にメジャースケールの音でメロディーを作る!

と大まかにでも決めておけば、頭の中の回転数を抑えながら(主にダイアトニック以外のコードだけに注意すればいい。)、演奏することができます。

 

初心者が演奏するようなスタンダード曲は、シンプルにダイアトニックコードが多用されている曲が多いため、ダイアトニックコードとそのメジャースケールの音階を覚えることで、かなり広く応用することができます。

このような理由で、頻繁に使う5つの調(キー)のダイアトニックコードとそのメジャースケールの音階を覚えることが重要なんです。

 

では実際にダイアトニックコードのみの進行で、アドリブを練習するためのコード進行を述べます。

一番簡単なC(ハ長調)のダイアトニックコードのみの進行として、

 

|F△7    |Dm7   |Em7   | Am7   | Dm7   |G7  BΦ7|C△7   |Dm7 G7 :||

 

こんなコード進行はどうでしょうか。

全てのコードはC(ハ長調)のダイアトニックコードで構成されています。

つまり、この曲であればCのメジャースケールであるドレミファソラシド、白鍵だけでアドリブすることで、自然と曲にマッチするアドリブができるはずです。

i real pro用の音源も作ってみましたので、下記のアドレスからi real proに読み込んで、マイナスワンで実践してみてください。

(i real proの読み込みが成功すれば、ダイアトニックという曲名でi real proに表示されるはずです。)

https://app.box.com/s/o93fnn09xxqjl9rq5ic84llwejm62637

 

まずは、C(ハ長調)のダイアトニックコードでアドリブしてゆくことに慣れていってください。

C(ハ長調)でのアドリブがある程度できるようになれば、

 

F(へ長調)

B♭(変ロ長調)

E♭(変イ長調)

G(ト長調)

 

といった優先順位の高いキーに転調して、それぞれのキーのダイアトニックコードでアドリブができるように練習を進めましょう。

 

では、次の項目として、ジャズがジャズであるための魔法、「ドミナント7」について、述べたいと思います。

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